サイクリックボルタンメトリーとは?静止系とかくはん系について解説

スポンサーリンク

今回はサイクリックボルタンメトリーについてです。なんとも中二心をくすぐる名前ですが、錯体化学の分野ではかなり重要な測定法です。

学生実験で触れる人も多いかもしれないですね~

サイクリックボルタンメトリー(CV)とは

サイクリックボルタンメトリーを簡単に説明すると、電位を循環的に制御しながら電流を測定する手法です。

電極の電位を変化させ、遷移金属錯体をはじめとした分子と電極との電子のやり取りを測定できます。

印加してる電位を時間とともに変化させることを掃引と言います。つまり、掃引しながら電流を測定しているわけです。

かくはんさせる場合(かくはん系)と、かくはんせずに静止したまま行う場合(静止系)があります。基本的に電極の周りで酸化還元反応が起こるため、この2つのデータを取り、反応を見る場合が多いです。

静止系のボルタモグラム

測定により得られるグラフをボルタモグラムと言います。以下は[Fe(CN)6]4-のものです。青い線が実際に測定した結果です。ピーク電流などをわかりやすくするために色々書きこんでいます。

静止系のボルタモグラム

山になっているところがピーク電流です。ここで最も電流が流れます。

まず、左端から正の電流のピークが形成されます。そして、横軸1100 mVのところで最大になった電位を下げていきます。すると、今度は逆向きの電流が流れ、負のピークが現れます。

正方向のピークでは還元体(Red)のFe2+が酸化され酸化体(Ox)が生じます。

また、負の方向のピーク電流は生じた酸化体が還元されることにより生じます。

かくはん系のボルタモグラム

かくはん系だとボルタモグラムは次のようになります。

かくはん系のボルタモグラム

最も電流の高い部分は限界電流と呼ばれ、Ilimと書きます。かくはん系は以下の記述で詳しく述べます!

波形からわかる!静止、かくはんの違い

かくはん系と静止系でなぜ異なる波形になるかを考えましょう。

まず、静止系では電極で反応が起こり、酸化体が還元体になっても、分散せずに電極の周りにとどまります。

よって、電圧を下げると還元体が反応し、酸化体が生成します。

静止系のグラフ

一方で、かくはんがあると、電極周りで生じた酸化体が分散し、溶液中に散らばります。よって、電極の周りには常に酸化体が供給され、酸化反応が電位を下げていったときも起こります。

つまり、かくはんしている場合のボルタモグラムは酸化反応しか起こらず、常に正の電流が流れるのであんな感じの波形になるのです。

かくはん系

なぜ、静止系の波形において上下のピークの大きさが異なるのか

静止系の波形を見ると酸化ピークの方が還元のピークよりも大きいですね。

これは、電極の周りの酸化反応で生成した酸化体が必ずしもそこにとどまらないためです。

少しの割合で溶液中に散らばり、酸化した100%が還元されるわけではないからです。

限界電流 Ilim はどうやって決まるの?

先ほども述べたように、 かくはんすると酸化反応しか起こりません。 かくはん系では 限界電流Ilimが電流の最大値となります。

これは常に酸化反応を起こすときに電極付近に集まる Fe2+には限界がありますよね?

つまり、飽和しているイメージです!

限界電流は電極に対する酸化体や還元体などの反応物の供給スピード、または反応が起こる電極の面積が大きいほど高い値を示します。

なぜ、電流が流れるのか?

そもそも、なんで電極の電位により電流が流れるのでしょうか?

サイクリックボルタンメトリーでは電極の電位のみ変えています。

電極の電位を上げると電子のエネルギーが下がっていきます。そして、あるところで錯体のエネルギーを下回り、電子が移動するため、電流が流れるのです。

電流の流れ

なぜ、電極電位が上がると電子のエネルギーが下がるのか?と思った方もいると思うので一応...

電子は負の電荷であるため、負に大きいほどエネルギーが高くなります。また、電極に負の電圧をかけると電子のエネルギーは高くなりますね!

HOMOの電位はどこからわかる?

つまり、測定する錯体や分子のHOMOが大きいほど小さい電位でピークが観測されます。

よって、HOMOの電位はピーク電位と同じということになります。

最も電流が流れる点がHOMOということになりますね。

サイクリックボルタンメトリーからわかること

サイクリックボルタンメトリーから以下のようなことが測定でわかります。

  • 反応物の酸化還元電位
  • 反応物の拡散定数
  • 反応速度
  • 反応物の吸着量

ちなみに拡散定数は電極で反応可能な化学種が溶液内でどのように移動するかを表す指標のようなものです。

拡散とは物質が濃度の高いところから低いところへ移動することです。電極付近では最初、酸化反応により酸化体が増え、拡散層が形成されます。拡散層の酸化体が拡散により溶液内に分散し、負の電流のピークが小さくなるんですね。

ここまでサイクリックボルタンメトリーの基礎知識について解説しました!最後まで読んでいただきありがとうございました!!

コメント

  1. Awesome post! Keep up the great work! 🙂

  2. Randall Renze より:

    Hello there. I found your blog by means of Google while searching for a similar subject, your web site got here up. It seems great. I have bookmarked it in my google bookmarks to come back then.

タイトルとURLをコピーしました